親愛なる"人間のオタク"達へー後編ー


前編はこちらから 



※核心的なことはなるべく避けていますがオクトラシリーズのネタバレを含みます。
※新規ハイゆえ知識不足は目を瞑ってください。
※屈強で偏った思想があります。


●広い世界の中で”おれ達だけ”の話をしよう

もうすぐお待ちかねのマフィアの話がはじまるぞ!この熱量に振り落とされるな!!!


『大陸の覇者』ではプレイヤーはまず富・名声・権力のいずれかを選んでゲームをスタートさせる。
それぞれの”極めし者”は3章ずつストーリーが存在し、どれから進めても問題なくすべてのシナリオをプレイできるが、逆にすべてをクリアしないとその先には進めない。
この中の”富を極めし者”編で、私(という名の選ばれし者)バルジェロファミリーという新生マフィア集団に新入りとして加入することになる。

ストーリー軸でいうとここの箇所

この時に”はい”を選ばなければ私は今こんな気持ちでこのテキストを打っていなかっただろう。
けれどあの時に”はい”を選んでいなければ今ここで心臓をずたずたに引き裂かれて答えの出ない葛藤にぐるぐると苛まれながら誰かに夢中になる日々もなかったであろう。
どっちがいいかと言われると出会えてよかったのでこの話を続けます。

 
オルステラ大陸の北西側に位置するウッドランド地方は、森や林など自然が豊かで他の地方と異なりおおよそ都市単位で自治が行われている。
近隣各国はわりと国家間の戦争をバチバチに行っている世界線なので、自然に囲まれている上に比較的平和にすごせる田舎地方だ。
そんなウッドランド地方に存在する小さな町”ヴァローレ”
ここが彼らの物語の中心で、ほぼほぼすべてである。

ここがヴァローレ

覇者くんは物語後半に進めば進むほど国家間の争いやオルステラ大陸で信仰されている”聖火教会”を中心としたごたごたなど、かなり大規模な話になっていく。
和平条約を結んだはずなのに侵攻されたり、「神はいない!」と暴徒が暴れて狂い出したりする中で、バルジェロファミリーのごたごたは最後まで一貫してバルジェロファミリーの中で行われる。
世界の中で何があろうとこいつらはずっと”おれ達”の話をしている、そこがめちゃくちゃいい。
※”名声を極めし者”のアーギュストもずっと自分と自分の芸術の話をしているのでめちゃくちゃいい。
 

ヴァローレは覇者くんのみに登場する都市でありバルジェロファミリーの話は良くも悪くもコンシューマー版の無印に一切関与しないので、作ってる側も自由にやってんだろうな~~~みたいなのが肌感でわかる。
がっつり少年漫画な布陣でしんどい場所から皆で力を合わせてのし上がってやんぜ!!という開拓根性がとてもメラつくストーリーは、インタビューを読むにどうやらジョジョの5部っぽさがあるらしいのだが、メロスはジョジョがわからぬ。
ざっと説明するとイタリアっぽいタランティーノっぽいイカしたやつらの話だ。

●そんなイカしたマフィアのメンバーを紹介するぜ!

左から順に………
すべて「クールだ」!フラ!!
やんちゃなお調子者!ピエロ・デッラ!!
俺たちのボス!バルジェロ!!
バンドなら絶対にベース担当!ティツィアーノ!!!!
弊旅団の”選ばれし者”!ロロ!!!!

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というのでまあ………好きだよね〜………ティツィアーノがサ…………と思いながらも彼を思い切り好きになるのはここではないのである。
ここには好きな男の過去があるのだ。

4人は子供のころからつるんでいて、俺たちで一旗あげてやろうぜ!!俺たちの町をいいように使ってこの辺りで大量に麻薬を売りさばいて金儲けてる”強欲の魔女”をぶっ潰そうぜ!!!!みたいななんやかんやがある。
そして途中皆の幼馴染紅一点ソニアとなんやかんやあったり、アホほど強いロッソという味方が混ざったりもする。
さらになんやかんやあってすっかり新入りでははなく"相棒"となった選ばれし者に相対するかのように、ボスのヘルミニアを前にしてティツィアーノがパーティーを離脱するのだった…………。

すべての詳細はゲームをやればわかるので、ゲームをやってください。
 
この後の話をしたいので前提として話す必要があるが、なるべく情報は削いでお届けしたい。
「おれの話を聞いて欲しいけど自分の目で見て欲しい」ってめちゃくちゃワガママな願望すぎて困っている。

要はファミリーとおれとの間で出会いも別れも喜びも苦い思いも全部分け合ってきた。そういうことです。


 
※ここからその先の話をします。


 

●それでもやっぱり”おれ達だけ”の話をしよう

富・名声・権力それぞれの3章を終えると”全てを極めし者”編という長編8章に突入し、一旦バルジェロファミリーとは距離を置くことになる。
全てを極めし者ではマジもんの国家間の争いが始まり「オルステラのために」といった角度のシナリオが進んでいく、規模がデカい。

それらのゴタゴタを片付けるとオルステラ大陸はそこから1年の時が経ち、富・名声・権力を”授けし者”編がスタートする。

ストーリー軸でいうとここの箇所

こちらもそれぞれ3章ずつ物語があり、どれからスタートしてもどの順番で進めても問題ない。問題と本題は、その後だ。


1年経ったヴァローレは少しばかりマシな町になっており、バルジェロファミリーの勢力も増し、新加入したおもしれー女の”レヴィ―ナ”さんがブレーンとして活躍していたりもする。
けれどこいつらは変わらずにヴァローレで"おれ達"の話をして、ちょっと前まで国をかけた争いに参加していた選ばれし者を当たり前のように"相棒"と呼んでくる。
故郷の村とダチだ、大切にしねえと!
詳しくはゲームをやってくれよな!!
 

そんな中、金持ちが闇に葬られる謎の事件が多発、バルジェロももれなくそのゴタゴタに巻き込まれていく。
自分の命を狙った不届きもんを俺たちで成敗だ!と乗り込んだ屋敷で怪しい奴を発見し、「何者だ………?」そうバルジェロが問いかけるとーーーーーーーーーーーーー
 

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賢明なオタク諸君はここまで読めば断言しなくとも”察せる”でしょう。
とにかくこのような出来事があり”持たざる者”オスカと名乗る男に情緒がめちゃくちゃにされてしまう。
めちゃくちゃにされた上でオスカの挙動と思考がとにかくもう全部やばいので完全におかしくなってしまった。


ものすごくざっっっっっっっくり要約するとオスカがこうなってしまったのは自分のせいである(そういう解釈でやらせていただいております)
オスカの想定外の能力を持っていたのが”選ばれし者”である自分で、自分がバルジェロファミリーに入ってしまったものだからオスカがこんなことになってしまった。
あの時”はい”を押さなかったらこんな未来は待っていなかったかもしれない。

そして復讐だの家のことだのなんだかんだ言ってはいるものの、最終的にオスカのブチギレ巨大感情ポイントがバルジェロに全振りしているのがすごい。

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「お前の特別になりたかったのにお前は皆が特別だもんな」とか「俺はこんなに薄汚い底があるのにお前はどこまでも真っ直ぐなのかよ」みたいなタイプのそれ。
私は能力とか計画の邪魔という意味でも、バルジェロの隣に”相棒”として立ってしまったことでも、そもそもとして”はい”を押してしまったことでもオスカの心をめちゃくちゃにしてしまったんだ………という罪悪感がすごい。
このゲームに関わる全レイヤーで責任を感じている

好きな男が自分のせいでおかしくなってとんでもないことをしでかしているのに、自分は意思を持って身動きを取ることができない。
出来るのは精々どうか今より少しマシになってくれと願いながら”はい”にペイすることだけだ。
そして”はい”にペイすればするほど、心が脆弱なヴィラン側は崩壊の末路を辿っていく。


見てくれよ………これが”自分のせいでおかしくなった男””それを地の果てまでも追いかけて止める男”だ………。
おれの入る隙間なんて最初からないはずなのに………おれのせいで………こんな……………。

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あの時やめてればさあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

という全ギャンブラーが良く叫ぶワードを延々と繰り返しながら”はい”にペイした結果、最終的にはハッピーエンドが見れるので安心して下さい
富授のあれがハッピーエンドじゃないってんだったら、この世のすべての人間関係に救いはない。

バルジェロはオスカを北極まで追いかけていってくれるし、北極で殴り合いが出来る。こいつらにはそのポテンシャルがある。
正面に立つことで初めて”特別”になれていることがあまりにも辛いが、けれどそのお陰でオスカはバルジェロとふたりでオケコンに行く権利を手に入れているのでこれはもう完全に勝利でしかない。
開発・クリエイティブチームさえも味方につけたオスカはすごい、そんなお前だからおれは…………………。

●”おれ達”の話なのにおれは何も出来ない

そのようにしてめでたくハッピーエンドを迎えた”富を授けし者”編だが、私の心と人生にものすごいしこりを残していく。
シナリオを担当している普津澤さんが富授のラストシーンを書き終えた後にスクエニの社食で泣いていたというエピソードがあるくらいなので、念と圧がすごい。
なんでこんなことになっちまったんだ、でもこれが一番納得できる道で救いだよ…………と思いながらどんどんと具合が悪くなっていく。

とにかくあまりにも出来のよい人間関係すぎてifが見当たらないのだ。
”しんどいけれど最適解”である以上、オタクはせめてストーリーの隙間を無理やり誇大解釈して生きていくしか救いが無い。
しかし3章かけても語り切れなかったものを”サブストーリー”と称して公式が8章+αかけて補完してくるのだ。

ちょっとそれってオタクが二次創作でやって「よかった~!!!」って自己救済する奴なんですけど!?!?!?!?!!?!?!?!?!?


なのでオタク(※一人称)のやることはわりとない、というかオタクの心が楽になる道があんまりない。ゆえに架空NPCの二次創作とかをしてしまうのだ。
公式が完璧すぎるせいであいつを想う胸の苦しみだけが残った、だから一生あいつはおれの傍にいるよ……………という気持ちで去年から暮らしてきて、もう2024年も春を迎えようとしています。

●そして、さらに

オスカの話ではなくなるが、これと近い狂わせを”全てを授けし者”編でもやってきやがりあそばせるから大陸の覇者チームは頭がおかしい(とても褒めている)

このテキストをお読みの有識者の方はお察しの通り、聖火守指長への罪悪感と思いもいっぱいいっぱいですがこちらは異常執着してくれている第三者がいるのでまだなんとかなっています…………なっていないかも…………。


オルステラ大陸編は現時点で一旦完結しているのだが、とにかくもう「お前らこれ最後のこのシーンのために今まで全部作ったか????」と言わんばかりの”クライマックスのための今まで”と”今までがあるからこそのクライマックス”である。
サブクエもろもろ寄り道しながらも300時間強人生の時間を費やしてきた上で見るラストはあまりに壮観だった。

7秒で見終える動画コンテンツが蔓延している令和において300時間を賭けられるものってとてつもない。
300時間かけて自分で”はい”を選んで、自分だけの旅団と共に歩んできたこの世界。
あくる日の明け方に最終章のその先まで読み終えて、その後もうずっと眠れなかった。
今もまだ思い返すと苦しくなるし、どうしたらよかったのかわからない。

私が選んできた道のりのはずなのに「本当にこれでよかったのか?」という疑問がずっと頭によぎる。
私がこの世界に現れなかったらこんな気持ちにならなかった、でも生まれてきた以上はなすべき事をなしたはず、けれど、けれど………。

そんな風に生と死と生きる意味を根本から考えさせられて誰かを慈しむ気持ちを思い出させてもらう経験
この世界は本当に”少しはマシ”になったんだろうか、あいつもあいつもあいつもいないのに。
出来たらここに、いてほしかったよ、皆。という当事者意識と罪悪感


こればっかりは本当に自分でやらないと手に入らない刺激と苦痛と喜びと悲しみと愛しさなので、ネタバレはしているけれど出来るだけ具体的なことは触れずにいたい。
この文章を読んでもなお300時間かける価値があるものだから、どうか…なるべく……新鮮な感動を…………どうか…………。

既存の友人および世の”人間のオタク”によさを説明したいが300時間もプレイさせられないからとひとまず何がどれだけいいのかをテキスト化したはずが、結局プレイさせようとしているのだった。
そういうもんですよ、欲は尽きませんから。


春が来るちょっと前にオープンアカウントを作ってみたものの、今まで触れてこなかった知らないジャンルはとにかく何もかも勝手がわからない。
わからない上に人付き合いが死ぬほど苦手なことを忘れていた、しかも直近までサーチバンされていた気配がある。どういうことだよ、一生孤独でいろってか。

そんなこんなでまごまごと過ごしてしまったが一介のオタクが何かひとつ間違えたくらいで国が滅びることはまずないので、とにかく自分の胸につまってるこの感情を一旦処理することとしました。
あと友人各位に近況を説明するのに便利なので。

●親愛なる"人間のオタク"達へ

 
皆さんお元気ですか?
突然の失踪で驚かせてしまっていたらごめんなさい。
 
私はこのように沢山の責任を感じながら今を生きています。
この文章を読んだ皆さんもどうか以下のURLよりアプリをダウンロードして、あなただけの旅をはじめてくださいね。

スマホでゲームやるのが苦手……」という人も安心してください。
コンシューマー版の無料体験版は、8人の中から気になる主人公を1人選んで1章をプレイ出来ちゃうんですよ。
ひとまずは気軽な気持ちでオクトラの世界の人間たちを観察してみてください。

こちら側でお待ちしております。

2024年春 ”人間のオタク”樟より

 

 
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