親愛なる"人間のオタク"達へ


 
 

お元気ですか?
私はマフィアの男に夢中です。

 
※核心的なことはなるべく避けていますがオクトラシリーズのネタバレを含みます。
※新規ハイゆえ知識不足は目を瞑ってください。
※屈強で偏った思想があります。

 

●ここまでのあらすじ

自分の人生をかけていた何もかもを突然、それも同時に失った昨年春。
私はとにかく元気がなかった、元気がなかったのだ。
元気がないのでSNSも連絡ツールも一気にすべて削除してインターネットの世界から姿を消した。
今のインターネットは、心が安らぐ場所が見つかる可能性よりも鋭利な石が飛んで来る確率の方が高く、メンタルが弱りに弱った状態で在籍するには余りにも危険すぎるからだ。
 
とはいえインターネットに身体の半分を預けているような人生を過ごしてきてしまったので、何かに着手していないと思考の矛先が自分に向いて気が狂いそうだった。
そんなところにオタク仲間より一作のゲームを勧められる、これが私と『オクトパストラベラーⅡ』の出会いだ。

www.jp.square-enix.com
 
そもそも私はゲームが下手くそだ。
RPGをほぼほぼやらずに育ってきたのでシステムがよくわかっていないし、FPS系のゲームはキャラコンがひどすぎるし画面酔いで具合が悪くなる。
毎月ソシャゲに家賃ほどの課金をしている友人たちを横目で見ながら自らはほとんど手を出さない人生を送って来た。
唯一オーバークックで劣悪環境ピークタイム時のバイトリーダーの如く喚き散らすことはできるが、人間関係を破壊するレベルの怒号を飛ばすので”向いている”とは言い難い。
 
そんな人間がRPGを始めること自体が人生のイレギュラー要素だ、世界に絶望していなければオクトラと出会うこともなかっただろう。
長い付き合いの友人が狂ったようにプレイしていることと、とにかく何かで気を逸らさないと気が狂いそうなほどの精神状態だったので言われるがままにソフトを購入した。
 
そこから気がつけば約1週間ほどでメインシナリオを粗方クリアする寝不足のオタクの姿がそこにあった。

 

●何がそんなによかったんですか?

 
ーーーー世界が、そこにありました。

人間が好きだ、けれど人間が嫌いだ。
そんな二律背反を背負ったまま、人間の社会コミュニティをのぞき込んだり飛び込んだり逃げ出したりを繰り返して生きている身としては、自分が傍観者のまま当事者としてひとつの世界に介入できることがとてつもない経験だった。
なんて矛盾している形容なんだ……と思うけれど、自分でプレイするゲームのよさってそこにあるかもしれない
もしかしてRPGってめちゃくちゃ面白いんですね???????
それを人生の今このタイミングで気がつくんだ、すご。


”主ジャンル:人間”として人生の半分以上の年月を捧げてきたオタクからすると「何これ本当に道を歩いてるみたい」と声に出してリアクションするくらい生々しく解像度が高いキャラクター達でソリスティア(※オクトラⅡの舞台)はひしめきあっていた。
自分が操作できる8人の主人公や主要NPCたちのキャラのよさも勿論あるのだが、この世界は何よりもモブの力がすごい。

街中で自分が操作するプレイヤーのコマンドを用いてモブ達から情報を聞き出したり、物を盗んだり、バトルを手伝ってもらうために連れていったり出来る。
出来るのだが、その時の情報量がとんでもない。

© 2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

このようなプロフィールを持っているNPCが当然の顔をして3桁は登場する。
この画像では解らないが、持ち物などもかなり凝っている(そしてそれを奪い取ったり盗めたりもする)

ストーリーに関与してこないNPCひとりひとりの情報が濃いゆえに、街も、森も、遺跡も、すべて解像度が上がる。
そんな解像度が上がった中で、自分が各主人公を操作しながら世界を守ったり、誰かを救ったり、時に傷つけたり傷つけられたりするもんだから没入感がとてつもない。
どれもこれも他人事とは思えないのだ。

 
オクトラシリーズの最大の特徴として、8人の主人公から最初にひとり選んでプレイしはじめ、そして残り7人の主人公も順番にパーティーに加わっていき、それぞれの物語を一緒に切り開いていく。
この8人の誰を最初に選ぶのか?そして誰から順番に仲間にするのか?誰のどの章からクリアしていくか?そういったこともプレイヤーにすべて委ねられているのだ。

同じゲームを購入してプレイしているはずなのにプレイヤーのカスタム次第でまるでまったく違った景色が見えて来る。
これはライブエンターテイメントにおける”同じ空間にいるのにまったく違うものを見てる”に近いものを感じた。
そういった己のカスタマイズ×異常没入感のコンボによって、よりいっそう”自分の物語”力が強まって手放せなくなり、夢中になる。
 

その上で、シナリオや台詞のテキストと演出がとても巧みだ。
洗練されていて無駄がなく、けれどきちんと遊びがある。語彙の引き出しが多く、音で聞いた時も視覚情報としてもテンポがよく無駄がない。
自分が操作しているキャラクターのセリフを読んでいる内に「次にどうするか」を考える間もなく行動に移っているので、まるでキャラクターと自分がシンクロしたかのような気持ちになる。

演出を想定しながら書いているであろうシナリオと、そのシナリオにぴたりとマッチする演出をドット絵の2Dで表現してくるものだからこちらの想像力がフルスロットルで掻き立てられる
振り落とされないように夢中にしがみつくので精一杯で、脳みそが悲しいことを考えている暇なんてなくなってしまうのだ。

 
そしてその世界観をより一層引き立てるオーケストラベースの楽曲たち。
耳障りがよく各シーンに自然に溶け込みまるでそこにあるのが当たり前かのように流れていく
曲が素敵(かつあまりにも豊富すぎる)のもさることながら、曲の使い方が本当に上手い。劇伴の扱いに近い気がする。

喜怒哀楽の感情を上手く引き出してくれる楽曲たちがかかるべきタイミングでシームレスに響き続ける
ボス戦や主要シーンなどでも「え?今切り替わった?」みたいなスムーズさで楽曲がスイッチして展開していくものだから、耳からもどんどん世界に吸い込まれていく。


Ⅱのトレーラーを見てくれ、これで大体世界観と楽曲がわかる。
www.youtube.com


というかこれやっぱりライブエンターテイメントなんだよな………ライブエンターテイメントをゲームでやってるんだって………。
何言ってるかちょっとよくわからないでしょうが、オクトラシリーズはライブエンターテイメントのオタクに刺さる要素が沢山あるゲームだと私は勝手に思っている。
でもそこの層に届いてないんだよな絶対に……届いたほうがいいって…………。


●で、お前が言ってる”覇者くん”って誰?

本当はⅡについてまだまだ深堀したいのだが、大概の人間はもうここまで読むのですでに疲れているに違いない。
なので物凄く不本意だが、一旦話をぎゅいんと本題へとすっ飛ばします。
多弁のオタクが好きなだけ語るのは本人の自由だが他者に読んで欲しいテキストなのであれば適量にすべきなのは流石に今回の人生ではもうよくよく学んだので。


ここまで話をしているのは2023年2月に発売したシリーズ最新作の『オクトパストラベラーⅡ』である。
オクトラシリーズにはコンシューマー版での前作『オクトパストラベラー』と、スマホ版として『オクトパストラベラー大陸の覇者』というタイトルが存在し、"sideオルステラ"と"sideソリスティア"として無印・Ⅱそれぞれの前日譚を描いている。

ざっくりこういうこと

つまり私が夢中になっている覇者くんは、なんとまあスマホ版である。
スマホ版にⅡの世界線が登場するのをキッカケにダウンロード&プレイしたところ「これが基本無料でプレイ出来ては世界の均衡が乱れるのでは??????」と大混乱するくらいの情報量&作り込まれ&ハチャメチャ面白くて信じられないくらい夢中になった。
しかも目当てではじめたソリスティア大陸ではなく、オルステラ大陸(無印の世界線のほう。
ていうかスマホでガチャがあるゲームって全部ソシャゲじゃないの???違うんだ????なーーーんもわかんねえ!!!!


Sideオルステラは数多のトラベラーの中からランダム配布された”選ばれし者”を主人公としてさまざまな出来事と出会う旅に出る。
ストーリー展開としてはこんな感じだ。

これが全部基本無料でプレイできるんだぜ………????おかしいだろ……………???
私は無料でプレイし続けている事実が怖くなったので途中から毎月お金を払っている
しっかりたっぷり還元されてくれ、作り手たちに。

●自分だけの物語で当事者意識を持とう!

コンシューマー版が8人という限られた確定要素の中から自分でカスタムしていくスタイルだとすると、覇者くんはここにガチャというランダム要素が加わる。
そのため自分でも絶対に再現不可な旅団が構築されていくのだ。
これが本当にすごい、”人生”じゃんな。

なので私がプレイしている覇者くんと、誰かがプレイしている覇者くんは同じゲームだが見えている世界や受け取り方・解釈が間違いなく異なる。
皆が同じ感想を持ちたがる現代社会においてこれはとんでもないことだ。
 
その上で”選ばれし者”は作中の人間関係をわりと俯瞰で見ている。
事象に介入しまくるもののコミュニティには参加しない、いわゆる傍観者スタイル。
私はとにかく”人間”をなるべく近くで一歩引いて見ていたいのでジャストストライク!!!!で己の欲求をぶち抜いていった。
これだ、これですよ、おれはこれを求めている。

弊旅団の”選ばれし者”がロロくん(人間よりも魔物が友達マン)だったのも相まって”世界を引っ掻き回すのにどこか社会に属しきれてない”というまさに私の人生みてえな旅がはじまった。
え????これは私の物語かも…………。
※”選ばれし者”で配布される各キャラクターにもそれぞれストーリーが付随するが、メインシナリオ時は汎用的かつ統一されたリアクションしか行わない。


そして覇者くんは至る所で”はい”を私にタップさせてくる
”いいえ”をタップすると物語がそこから進行しなくなるので、”はい”しか選べないというのに、わざわざご丁寧に私の指にタップさせてくるのだ。

これはストーリーもりもりゲームなので当然のごとく作中でとんでもないことが次々と起きる。
けれどこのとんでもないことも全て私が”はい”を選んだ結果である。
いいことも、悪いことも、辛いことも、悲しいことも、あいつの恨みも、この苦しみも、泥にまみれた嫉妬深いこの気持ちさえも皆………あの時おれが………おれが”はい”を押したから……………。
この罪悪感と当事者意識たまんね~~~~~~~!!!頭から変な汁が出る。

www.youtube.com

このPVがすべてである、これだよこれこれ。


●自我があるヴィラン達を前に罪悪感でへなへなになろう!

コンシューマー版と覇者くんの差異で気に入っている箇所はヴィランサイドの事情がかなり解像度高くわかることだろうか。
(そもそもわりとしんどい展開が続くタイプのシリーズかつヴィラン側の様子がわかりやすいほうな気がするが、それでも尚だ。)
 
主人公が固定キャラクターではなく”選ばれし者”(=プレイヤー)という第三者であるからこそ、ヴィランを取り巻く人間関係が己とは別個に存在する
ストーリー展開上、片方に加担しているがあくまでも自分は傍観者であり、ヴィランとそれに相対する人間の人間関係と巨大感情を目前で浴びることができる、これがもうとてもよかった。
「お前のことを認めてるからこそ、自分の哲学は曲げらんねえ」という結果の120%対120%のぶつかり合いを間近で見られる。すごい。サイコー。
 

ヴィラン側の方により人間味があるのも面白い。
より繊細で、より心が弱く、より”最後まで信じられなかった”者たちが堕ちていく傾向にある(そうでもない奴も勿論いる)
オクトラシリーズのヴィランのことをわりと他人事には思えないので、ストーリーを勧める度に心臓が痛いし、申し訳なくなる。

けれどこの感覚が物凄く好きだ。
誰かの人生に対して一方的に善悪を決めつけてエンターテイメントとして消費するよりも、一緒に苦しくなって追体験するほうが私はよっぽど幸せに感じる。
私は誰のことも裁けないからだからせめてあなたの話を聞かせてよ………と思いながら生きているので。

 
”嘘”とか”ペルソナ”とか”信じられないから壊すしかない”とか、そういう不安定ゆえに惹かれる美しさみたいなものが覇者くんの世界にはふんだんに散りばめられている。
人間はあまりにも脆くて欲深くて醜い、けれどだからこそ儚くて力強くて美しい
これは紛れもなく私が嫌いで、そして大好きな人間たちだ。

またシリーズ通して”演じる”ということに対する解像度がかなり高く、演劇・劇場関係者がやたら登場する。
なんなら”名声を極めし者”では相当サイコな劇作家が最初からフルスロットルギアでめちゃくちゃやっているので、作り手のトップのほうの誰かが学生演劇をやってたとかじゃなくて???????というくらい演劇への到達度が高い。

こちらが覇者くんきっての天才劇作家・アーギュストさんです。

© 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

 
この画像を見て気になった人間のオタクは『オクトパストラベラー大陸の覇者』くんをダウンロードして、とりあえず名声を選んでみないか?????????

ダウンロードするのも基本プレイも無料だから!!!騙されたと思って!!!!!!!!

www.jp.square-enix.com



●ところでマフィアの話はどうなったの?

すみません、5,000字もお待たせしてしまいました。
あまりにも長くなってしまったので一旦休憩します。
 
この後すぐにマフィアの話がはじまるぞ!
脳みそを十二分に休ませてから己でタップして後編へ進め!!!!




後編はこちら
shchg-u.hateblo.jp